第20章 事件
『助けて…!!不死川さん…!!』
その瞬間、ドカッ、という大きな音が狭い部屋に響く。
それと同時に身体の上に感じていた人1人分の重みがなくなった。
杏(なに…??)
何が起こっているのかわからず、そっ、と目を開けると、そこには先程自分が名前を叫んだ人が息を切らして立っていた。
『…なんで、いるの…。不死川さん…。』
その顔を見た途端、恐怖と悔しさから溢れていた涙が安堵の涙に変わる。
不「音白!!大丈夫か!!」
杏の呟きと涙を見て慌てて駆け寄る不死川。
『不死川さん…不死川さん…、うぅ…、』
ただひたすら、不死川の名前を呼ぶ。
そんな杏を不死川は優しく抱き起こし、縛られていた縄を解く。
不「はぁ、はぁ、間に合って良かった…。」
『不死川さんっ、』
身体に力が入らず、抱きつくことはできないが、胸に頭を置き、啜り泣く。
不死川は杏が泣き止むまで、頭を優しく撫でていた。
不「落ち着いたかァ??」
『グス、はい…。』
泣き止み、顔を上げた杏にそう尋ねる不死川。
不「動けそうかァ??」
杏は弱々しく首を横に振る。