第20章 事件
杏(どんだけ強い薬盛ったのよ、あいつ…。
しかも多めに盛ったとか言ってたけど、薬は用量守りなさいよ。…もう、座っていられない…。)
だんだんと座っていることも辛くなってきた。
杏(しのぶさんの言う通りになったわね。
小鳥遊さんではなかったけれど…。
というか、誰がこんなこと予想できるのよ。)
はぁ、はぁ、と息が乱れて、整えることができなくなってくる。
杏(落ち着いて、呼吸を、整えないと、バレちゃう…。)
──ヒタ、ヒタ
そのとき、聞こえて来た足音に思わずビクッ、と身体が跳ねる。
隠「桜柱様…。杏様…何処ですか??
動けないからまだ屋敷の中ですよね??
もう逃げられないんだから出てきてくださいよ。」
外から杏を探す隠の声が聞こえる。
身体がカタカタ、と震えだす。
杏(っ、情けない…、こんなことで…。)
力の入らない手でグッ、と自分を抱きしめる。
隠「何処ですか〜??蹴りは痛かったですけど、
今出てきてくれたら怒りませんから。
出てきてくださいよ〜。」
杏(絶対嘘でしょ…。はぁ、目が霞んできた。
サクラ……お願い、早く…。)
眉間を抑えながら心の中でサクラを呼ぶ。