第20章 事件
そう呟いて手を伸ばしてくる隠。
杏(いまっ!!)
隠「うっ、」
その隙をつき、お腹に蹴りを入れた。
いつものような威力はでないが、踞ったのを確認して急いで小鳥遊を抱き上げる。
杏(今のうちに逃げないと…、)
フラつきながらもなんとか足を進める。
杏(でもどこに…あの程度の威力じゃ屋敷を出る前に追いつかれる。それなら何処かに隠れた方が…。)
キョロ、と屋敷を見渡す。
杏(鍵のある部屋が1番だけど絡繰をしてる時間はない。とりあえず武器もあるここに…。)
近くにあった2つある衣装部屋のうちの1つ、隊服や羽織、日輪刀を置いている部屋に逃げ込んだ。
『はぁ、はぁ、はぁ……、』
息が乱れ、動かない身体を腕で擦る。
杏(どうしてこうなったの…。)
息を潜め、暗い部屋の中で頭を抱える。
羽織を掛けておく衣桁から1番長い棒を外し、外から開けられないように細工する。
杏(これで大丈夫。サクラが誰か助けを呼びに行ってるから、ここで助けを待つ…。
あいつは隠だったから、隊士ほど力はないはず。
力尽くで戸は破れない…。)
だんだんと朦朧としてくる頭で無事でいられる方法を必死に考える。