第19章 柱稽古
『これからある闘いでは何が起こるかわかりません。なので、これは預かりましょう。私になにかあればこれを蝶屋敷へ届けるよう頼んでおきます。』
手を握ったまま話を続ける。
『だけど、しのぶさんも忘れないでください。
私はしのぶさんに生きていて欲しいです。
皆さんに死なないでほしいと思っています。
きっと蝶屋敷の子たちも皆、同じ想いです。
どうか、忘れないでください。』
ニコッ、と微笑む杏。
し「杏さん…。」
『私の奴への憎悪が止まらないのと同じで、しのぶさんの奴への憎悪が止まらないのも分かっています。だから止めません。
でも、忘れないでください。』
姉たちが自分に言ってくれたことをしのぶに伝える。
し「…ありがとうございます、杏さん。」
眉を下げて困ったように微笑むしのぶに挨拶をして、杏は蝶屋敷を後にした。
『ただいま戻りました。』
カラカラ、と戸を開けて自分の屋敷、花屋敷へと入る。
小「音白様、おかえりなさいませ。」
『小鳥遊さん。掃除してくれてたのですね。
ありがとうございます。』
小「いえ、この程度当然のことです。」
出迎えてくれた小鳥遊に挨拶をして自室へと戻る。