第19章 柱稽古
し「それで、杏さんにお願いがあるんです。」
『お願い…ですか??』
し「はい。少しよろしいですか??」
そう言って立ち上がるしのぶ。
『はい。』
歩きだすしのぶについていく杏。
辿り着いたのはしのぶの自室だった。
し「これを杏さんに預かって頂きたいのです。」
『これは…、』
し「遺書です。蝶屋敷の子たちへ向けた…。」
『……どうして私に??』
しのぶから差し出された遺書を受けとる。
し「杏さんは死ぬ気はないのでしょう??」
『え??』
し「以前の杏さんはいつ死んでしまうかわからない気がしていたのですが、記憶が戻ってからはどこか違うように感じていまして、違いましたか??」
『……本当に、敵わないですね。
しのぶさんには…。』
悲しげに微笑む杏。
『姉たちと夢の中で約束したんです。
姉たちの分まで幸せに生きると。
何があっても、生きることを諦めないと。
そして、私に死んでほしくないと思ってくれている人がいるということを忘れないで、と言われました。』
し「素敵なお姉さんたちですね。」
『はい。』
しのぶの言葉に杏は笑顔で頷く。
そして、真剣な顔でしのぶの手を握る。