第19章 柱稽古
『私もまさかここまでの早さだとは…。』
ちょっとびっくりしてます、と笑う杏。
『あ、そういえば…昨日どら焼き作ったので良ければ蝶屋敷の皆さんで食べてください。』
し「まぁ、ありがとうございます。
あの子たちもきっと喜びます。」
どら焼きの入ったお重を受け取り、頬を綻ばせるしのぶ。
し「最近、みんな凄く頑張ってくれてるんですよ。
稽古での怪我の治療などとても積極的にやってくれてて。私は毒や薬の開発に専念できてます。」
『いい子たちですね…。』
し「えぇ。そうだ、例の薬はアオイも手伝ってくれたんですよ。」
『まぁ、アオイちゃんも??』
し「アオイがいなければきっともっと時間がかかっていました。」
嬉しそうに話すしのぶ。
し「きっと、もう私がいなくても大丈夫。(ボソッ」
そして、ふと、暗い顔を見せ、小さく呟いたのを杏は見逃さなかったし、聞き逃さなかった。
『しのぶさん、今のはどういう…、』
し「あら、聞こえてました??」
いつものようにおどけるしのぶ。
『しのぶさん。』
じっ、と真剣な瞳でまっすぐしのぶを見つめる。
し「……わかりました。」
杏の真剣な瞳に降参です、と笑うしのぶ。