第17章 刀鍛冶の里-強襲
心底、どうでもよかった。
早く、有一郎の所へ行きたかったのに突然体が鉛のように重くなって目の前にある家まで随分時間がかかってしまった。
地面を這いながら何とか家に辿り着いた無一郎。
有一郎はまだ息があった。
そのことにホッ、と安堵し、何とか近づこうと這う。
そのとき、有一郎から小さな、小さな声が聞こえてきた。
有「……神、様。仏…様…どうか…、どうか…弟だけは…助けてください…。弟は…俺と…違う…心の優しい…子です…。人の…役に…立ちたいと…言うのを…俺が…邪魔した…。」
それは初めて聞いた兄の心の内だった。
有「悪いのは…俺だけ…です。バチを当てるなら…俺だけに…してください……。」
兄の言葉にポロポロと涙が零れる。
兄が死にゆくのを察し、必死で手を伸ばす。
有「わかって…いたんだ…。本当は……。」
自身の体もうまく動かせず、プルプルと震える手で兄の力ない手を握る。
有「無一郎の…無は……
“無限”の“無”なんだ。」
頭に響く兄の最期の言葉。
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有「お前は自分のためではない、誰かのために無限の力を出せる選ばれた人間なんだ。」
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