第17章 刀鍛冶の里-強襲
時「ガハッ、ゴフッ、グッ、ゲホッゲホッ、ゲホッ、ゲホッ。」
時(父は杣人だった。息子である僕も木を切る仕事の手伝いをしてた。)
時「ハァ、ハァ…。」
時透は身体中に刺さったままだった針を抜き、顔を歪める。
時(くっ…痺れが、ひどい…この針……。水の鉢から出られた所で僕はもう…。)
そんな時透の脳裏に今度はお館様の言葉がよみがえる。
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お「杓子定規に物を考えてはいけないよ、無一郎。確固たる自分を取り戻した時、君はもっと強くなれる。」
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時(お館様の顔だ。病が進行して痛ましい。)
時「こ…小鉄、くん。」
時透は倒れ込んだ小鉄を抱き起こす。
背後に迫っていた、小鉄の鳩尾を刺した魚の鬼を素早く斬り裂く。
時「ゲホッ、ゲホッ。」
時(肺が痛い。水が入ったからだ…。母さんは、風をこじらせて肺炎になって死んだ。嵐の日だった。薬草を採りに出て行った父は崖から落ちて死んだ。)
失った記憶が、少しずつと浮かんでくる。
だんだんと記憶にかかっていた霞が晴れていく。