第17章 刀鍛冶の里-強襲
ググッと、小刀を握る力が強くなっていくのがわかる。
杏(だめ、落ち着いて…。この感情をそのままにしておいたらまたあのときと同じ、周りが見えなくなる。冷静になるのよ。憎しみを込めるのは刀にだけ…。体全体に渦巻いている憎悪の感情を全部刀に…。)
玉壺を睨みつけながらゆっくりと、深く、息を吐く。
杏(大丈夫、私は冷静よ。
鉄穴森さんをちゃんと逃した。
正しい判断ができてる。)
杏が殺されることはまずないだろう。
鬼たちの始祖、鬼舞辻無惨が欲しているのだ。
無許可に殺せば、その鬼が殺される。
鬼は生きることに執着した生物。
自ら死ぬようなことはしないだろう。
だとすれば、誰が危険なのか。
杏と共にいる人間だ。
鬼たちの目的である杏の回収、杏の隣りにいる人間はきっとそれを邪魔するだろう。
ならば確実に殺される。
加えて、上弦ノ鬼は人間を殺すことをなんとも思わない。
殺して当然なのだ。
殺してはいけない人間がいるならば殺さないが、そうでない人間は殺す。
不死川のように闘えるならばまだいいが、鉄穴森は闘う力などない。
小刀しかない今の杏では守りながら闘うのはなかなかに難しい。
ならば、この鬼から遠ざけるしかない。