第13章 記憶
いつの間にか、杏の服装は隊服から桜柄の綺麗な着物に変わっていた。
ゆ「大丈夫よ。言ったでしょう??
ずっと見守ってたって。」
つ「杏が鬼殺隊に入っていることも知ってるわよ??」
も「私たちのことを思い出して、仇をとりたいって思ってることも分かってるわ。」
杏が後ろめたく思っていようとも、姉たちは優しい笑顔を崩さない。
百合が杏の肩にそっ、と触れる。
ゆ「杏ちゃん。あいつは強い。たとえ今の杏ちゃんでも闘えば勝てる確率は低いでしょう??私たちの勝手な想いを言わせてもらうならね、鬼殺隊なんて辞めてほしい。普通の女の子として普通の女の子の幸せを手に入れて、おばあちゃんになるまで幸せに生きてほしいの。」
百合の言葉に顔を上げた杏の瞳は涙で濡れていた。
しかし、その濡れた瞳の奥に宿る強い憎悪の炎がチリチリと揺れ動いているのが見えた。
百合はふぅ、と息を吐き、杏の両手をとる。
ゆ「でもね……私たちにそんなことは言えないのよ。杏ちゃんの人生は杏ちゃんのものだもの。どう歩もうと誰にも指図する権利はないわ。……杏ちゃんのやりたいようにやっていいのよ??」