第13章 記憶
杏の身体を抱きしめる3人の少女が愛おしそうに、杏の名前を呼ぶ。
『百合、姉さん…??椿姉さん…??
紅葉姉さん…??』
目を見開き、困惑している杏の身体をさらに力強く抱きしめる。
ゆ「えぇ、そうよ。長い間1人にしてごめんね。」
つ「大きくなったね、杏。」
も「本当に…、あんなに小さかったのにね。」
3人の言葉に大粒の涙がボロボロと零れる。
『ほん、と…なの??姉さんたちなの??』
杏の問いかけに抱きしめていた身体を離し、涙を零す杏の顔を笑顔で見つめる。
ゆ「えぇ。私たちのこと、思い出してくれたのでしょう??それで杏ちゃんの夢の中に出てくることができたのよ。」
つ「ありがとうね。思い出すの辛かったでしょう??」
も「ずっと待ってたのよ。杏が記憶を取り戻すのを、ずっと見守ってたの。」
あの頃と同じように優しく微笑み、杏の頭を撫でる。
『ごめんなさい…。私、ずっと何もわからなくなってて…姉さんたちのことを忘れてた。これまで頑張って生きてきたけど、いつ命を落とすかわからない生活をしてるの…。』
俯き、小さく呟く。
最後の言葉は聞き取れるかどうかもわからないほどの声量だった。