第13章 記憶
木箱をそこへ入れようとしたとき、既に入っていた遺書を見つけてしまった。
不(…まぁ俺も書いてるし珍しくもねぇかァ。
しかし…なんでお館様に預けてねぇんだァ??)
鬼殺隊員は皆、遺書を書いておりそれをお館様に預けている。
それは柱も例外ではない。
不(……まぁいいかァ。)
考えても仕方ない、と木箱を中へ入れ引き出しを戻す。
一旦、杏を床へと寝かせ、押し入れの前に立つ。
不(布団は恐らくここだァ。
だが、勝手に開けていいものか……。)
親しいといえど、自分と杏の関係は同僚以外にない。
勝手に押し入れなど開けていいのか、考え込む。
不(畳で寝かせるわけにはいかねぇしなァ。
……開けるかァ。)
よし、と顔を上げて襖を開ける。
恐らく普段から使っているだろうと思われる布団を取り出し畳に引いて杏をゆっくりと寝かせる。
甲斐甲斐しく布団もかけてやると、穏やかな顔で寝ていた。
不(悪い夢は見てねぇようだなァ。)
刺さったら痛いだろうと簪を抜いてやる。
パサ、と言う音と同時に布団の上に広がる黒髪を一房とる。
しばらく、無言で杏の寝顔を見ていたが立ち上がり部屋を出ていった。