第13章 記憶
不死川の手の温もりを頭に感じ、涙を溢す。
杏は不死川の過去を知っている。
親友の粂野匡近のことも知っている。
粂野匡近の仇は柱になる前にとったが、母や兄弟姉妹たちの仇はとれない。
トン、と自身の頭を不死川の胸に預け、小さく呟いた。
『…ありがとうございます。
少し、疲れたので…眠ってもいいですか??』
不「俺も、しばらくは任務を休んでお前の側にいろとお館様からのお達しだァ。ゆっくり休め。」
『はい…。』
ポンポン、と背中を叩かれ、夢の中に落ちていった。
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不「…寝たかァ。」
スースー、と規則正しい寝息が胸元から聞こえてくる。
こんな体制で眠らせては身体を痛めるため、ゆっくりと横抱きにする。
不(前に記憶が刺激されたときは2月も眠ってたんだァ。今回のほうが負担は大きいだろうし、しばらく目覚めねぇかもなァ…。)
部屋をどうするか迷ったが、とりあえず鍵を閉め木箱に戻す。
不(さて…流石に絡繰はどうすりゃいいかわかんねぇし開いてる引き出しに入れとくかァ。)
杏を抱いたまま、器用に引き出しを開ける。