第13章 記憶
声を震わせながらも必死に言葉を紡ぐ。
『胸から爪を抜かれるときに右腕を持っていかれた百合姉さんはそのまま私の腕の中で亡くなりました。あいつは……人の命を奪うことをなんとも思ってない。むしろ笑って、楽しんでいました。
許せない。絶対に許さない。』
負の感情がとめどなく溢れてくる。
『ねぇ、不死川さん……。
私、どうしたらいいんでしょうか。こんな感情は初めてでどうしたらいいかわからないんです。』
そう問いかけられ、今まで黙って話を聞いていた不死川が口を開く。
不「…好きなようにすりゃいい。
鬼殺隊にいる奴らはほとんどそうだろォ。
お前と同じその感情をほとんど全員がもってる。」
『………私は今まで、お館様の悲願である鬼舞辻無惨の討伐のために日輪刀を振るっていました。今もそれは変わらないです。お館様の悲願を果たしたい…。でも、たとえ私の手でなくても奴の頸を落としたい。姉さんたちの仇をとりたい…。』
俯き、溢れてくる負の感情を吐露する。
不「お前は仇をとる相手がいんだァ。
とればいい。俺にはもうできねぇことだ。」
不死川は杏の頭に手を置き、ポンポンと軽く撫でる。
『不死川さん……。』