第13章 記憶
不(着物や浴衣、帯…。あれは琵琶かァ??
弦切れてんなァ。鏡もある。先刻の話から察するに姉たちの遺品か。)
部屋を見渡し、先刻のお館様と杏との会話を思い出す。
そして目の前で未だに部屋に入らずに立ち止まっている杏を見下ろす。
少し硬い表情が見て取れる。
瞼を閉じ、小さく息を吐くと覚悟を決めたかのように目を開く。
ゆっくりと部屋に足を踏み入れる。
『不死川さんも、どうぞ。』
不「あァ…。」
杏のあとにつき不死川も部屋に入る。
『ずっと、何となく大事な物たちだったんですけど………姉さんたちの形見、だったんですね。
そりゃ大事ですよね。』
フッ、と自傷気味に笑いながら近くにある着物に触れる。
そのまま3つの髪飾りが置いてある台の上で立ち止まった。
その中から髪紐に触れる。
『この百合の花の髪紐、百合姉さんのものなんです。百合姉さんはあのとき20歳でもし生きてたら…27歳ですね。長くてきれいな髪で毛先はほんのり青色に染まってました。百合姉さんは本当に綺麗で縁談の話もたくさんあったんですけど、私たちが皆結婚するまで結婚しないって言ってました。それで私、できるだけ早く結婚しようって思ってたんです。』