第13章 記憶
そのまま部屋に入り、ある棚の前で杏は立ち止まり、その棚を見上げる。
不「どうしたァ??」
無言で棚を見上げる杏に不死川が後ろから声をかける。
それと同時に杏も手を伸ばし、棚をいつも通り動かしていく。
不「…何してんだァ??」
絡繰を見たことがないのか、奇妙な動き方をする引き出しを見て眉間にシワを寄せる不死川。
『これ、絡繰棚なんです。』
慣れた手付きで引き出しを動かす。
──カタン
開いた合図の音がし、真ん中の引き出しを引く。
木箱をそっ、と取り出し、大事そうに抱える。
振り返った不死川を見ると、ニコッ、と微笑む。
『さて、では開けましょうか。』
不「あ、あァ??」
これから何をするのか全くわからないところに不死川はとりあえず着いていく。
『ここです。』
不「この部屋…いいのかァ??誰も入れたくないと言ってたじゃねぇかァ。」
杏が示した鍵のかかった部屋の扉を見て驚く不死川。
『はい。少し、付き合ってください。』
少し、弱々しく微笑む。
──ガチャ
木箱から鍵を取り出し、鍵を回す。
1度、小さく深呼吸をして襖に手をかける。