第13章 記憶
バタバタと治療道具を持ってきて治療してくれるしのぶ。
小さな切り傷だけだが、無数にあるため時間がかかる。
し「ちなみにでたのは…」
『上弦ノ弐です。』
し「っ!!…上弦ノ、弐が、ですか…。
あ、すみません。」
大きく目を見開き、手に待っていた消毒綿を取り落してしまうしのぶ。
『いえ、大丈夫です。』
大人しく治療を受ける杏。
し「しかし…よくこれだけの怪我で済みましたね。宇髄さんは腕一本持っていかれましたのに…。」
『……あいつは私を殺す気はなかったみたいですから。不死川さんはしっかり命狙われてましたけど。』
し「あぁ、それで不死川さんにだけ少し深めの傷があるんですね。よし、杏さんはこれで大丈夫ですよ。」
次、不死川さん、としのぶが呼ぶ声に渋々といった感じで椅子に座る不死川。
し「あら、今日は随分と素直なんですね。
毎回こうだといいのですけど。」
治療からよく逃げる不死川にしてはすんなりと治療が開始でき、しのぶは楽しそうに微笑む。
『これからすぐお館様のところへ行きますからね。傷だらけじゃ…って思ってるんでしょうね。』
杏もふふっ、と小さく笑う。