第12章 邂逅
不「…音白、紐持ってるかァ(ボソッ」
『え…??あ、はい。』
不「貸せェ。」
杏は慌てて羽織の袂から長めの紐を取り出す。
不死川にそれを渡した瞬間、突然身体が浮き思わず悲鳴を上げる。
『きゃっ、』
不「よし、しっかり捕まってろよォ!!」
今の一瞬で不死川は杏を肩に担いだ状態から背負う状態に変えた。
そして、杏から受け取った紐で背負結びをしたようで不死川が杏から手を離してもブラン、とぶら下がっている。
『は、はいっ!!』
ぎゅっ、と不死川の首に手を回し、少しでも邪魔にならないように身体を密着させる。
童「それじゃあ、こっちからいくよ。」
童磨はニコニコと笑ったまま扇を振るう。
─ 血鬼術 散り蓮華 ─
瞬間、かなりの広範囲に氷の花びらが舞う。
─ 風の呼吸 参ノ型 晴嵐風樹 ─
不死川は自身の周囲に嵐の如く暴風を巻き起こす技を放つ。
不「くっ、」
それでも斬りきれなかった分を後ろに飛んで回避する。
そのとき、杏は不死川の背にいることでかなり冷静に戦況を見ることができていた。
じっ、と童磨を見ていると不死川が後ろに飛んだ瞬間、奴がニヤッと笑うのが見えた。