第12章 邂逅
不「音白!!」
不(クソッ、聞えてねぇなァ…。)
頭を抑え、目を見開いたまま固まり、動かない杏を見て舌打ちする不死川。
「ねー、俺その子に用あるんだよね。
だからその子頂戴??」
不「ア??クソ鬼の分際で何ほざいてやがる。
やるわけねぇだろォ!!」
近づいてくる鬼から不死川は杏を抱えて距離を取る。
『ゆり、姉さ…つば、き姉さ…もみじ、姉さ…』
不(ゆり姉さん、つばき姉さん、もみじ姉さん??ゆりにつばきにもみじ…。)
小さな声で呟く杏の声を拾い、眉をひそめる。
百合と椿と紅葉の3種類の植物。
不死川はその植物に見覚えがあった。
不(それって…あの庭の…)
杏の屋敷である花屋敷の4つの客間の庭。
百合、椿、紅葉、そして杏がメインにつくられたそれぞれの庭。
まさか…、と不死川が考えていると鬼が思い出したかのように声を上げる。
「ゆり姉さん、つばき姉さん、もみじ姉さん…。あぁ!!そういえば、君姉さんたちがいたねぇ!!みんな美人の!!美味しそうだったなぁ!!」
『…………え??』
少しずつ頭痛になれてきた杏が鬼の言葉に反応を示す。
不「音白!!大丈夫かァ!?」