第12章 邂逅
不「……あァ。」
『その子どもたちは…それぞれ何か辛いことがあって、幸せな夢を見せてくれるという鬼の口車に乗ったようでした。もちろん、どんなに辛いことがあったからといって、自分の利益のために他の人を殺めていいわけではありません。』
杏は悶々と、心のなかで考えていたことを吐露する。
『しかし、同情はしてしまいます。誰かを殺める…その手助けとはいえ、そんなことをしてまで幸せな夢を見たいと思ってしまうような、そんなことが…もしかしたら珠さんにもあったのかな…と、少し考えていました。』
思い起こすのはずっと笑顔で、閉じられていた珠の瞳。
不「…何か気になることでもあるのかァ。」
『珠さんの瞳はずっと閉じられていてなかなか見られませんでした。でも…2回程、見ることができました。』
声をかけられたときと頭痛がおきたときの2回。
『とても暗くて、何も映していないような…たしかに私の方を見ていたと思うのですが、彼女の瞳に私が映っているようには思えませんでした。あと…』
とても、見覚えがあるんです、そんな瞳に…と小さく呟く。
不「見覚え??どこでだァ。」
そんな面倒くさい奴は鬼殺隊で見たことねぇぞ、と付け加える不死川。