第12章 邂逅
不「チッ」
“お館様”という言葉を出されると弱い不死川。
舌打ちをし、そのまま乱暴に部屋の襖を開ける。
ズカズカと部屋に入っていく不死川の後を追い、杏も中に入る。
『さて、着替えますか。』
そう言いながら風呂敷から隊服を取り出す。
不「俺は外に出てる。」
『わかりました。終わったら呼びますね。』
不「あァ。」
不死川が外に出たのを確認して着物を脱いでいく。
杏(それにしても…本当にいい着物ね。
ちゃんと綺麗なままで返さなくては…。)
綺麗にたたみ、風呂敷に入れて包む。
黒のスカートに白のブラウスにベルトを締め、黒の詰襟を羽織る。
柱の証である金色の釦を1番上までしっかりとめる。
杏(今回の鬼…なんなのかしら。
人を利用して人を集めてる…。
どうして珠さんは鬼に協力しているのか。
あの店の人はみんなそうなのかしら。)
これから向かう山でのことを考えてうーん、と唸る。
いつもの羽織を纏い、日輪刀の入っている袋を手に持つ。
『よし…。不死川さん、よろしいですよ。』
襖を開け、外で待っている不死川に声をかける。
不「おゥ。」