第12章 邂逅
不死川が舌打ちするのを肩をすくめながら宥める。
『さて、そろそろ1度宿に戻りましょうか。』
隊服に着替えなくては、と続ける杏。
不「そうだなァ。」
宿に戻ると、すぐさま女将さんが駆け寄ってきた。
その不安そうな、申し訳無さそうな表情に首を傾げる杏。
「お帰りなさいませ。不死川様。」
『あの…、どうかなさいましたか??』
杏は心配になり、思わず尋ねる。
「実は先程少し話し合いがありまして…大変申し訳無いのですが…料金を前払いでいただいてもよろしいですか??」
『前払い…ですか??』
旅館でそのようなことは言われたことがないため、おもわずキョトンとした表情を浮かべてしまう杏。
「実は…この頃、泊まりに来た方々がお金を払わずに消えてしまうことが多く…この宿はかなりの経営難なのです。お二方を疑ってしまうようで申し訳ないです。」
『あぁ、そういうことでしたか。
わかりました。』
杏は実弥さん、と不死川の袖を掴むと不死川は袖から財布を取り出す。
不「これで足りるかァ??」
「っ、これでは多すぎます!!」
自分の手に置かれたお金に驚き、声を上げる女将さん。