第12章 邂逅
男たちの言い合う騒がしいなか、凛と響く声。
浮かべている笑みを崩さず、近寄ってくる。
『貴方は…??』
小さく微笑み、尋ねる杏。
不死川から見たその姿にはうっすらと警戒心が感じ取れる。
珠「申し遅れました。この先の食事処で看板娘をしております、珠と申します。この町で生まれ育ちましたので若夫婦に丁度いい穴場もご紹介できますよ。」
丁寧に頭を下げた珠と名乗る女に一瞬、厳しい視線を向ける杏。
しかし、珠が頭を上げる瞬間にはパッ、と笑顔を貼り直す。
『でしたら、そちらへ行ってみましょうか。』
ねぇ、実弥さん、と不死川を見上げながら微笑む杏。
不「…あァ。」
珠を一瞥したあと、杏の方を向き小さく呟く。
珠「まぁ、良かったです。
それでは案内いたしますね。」
「にいちゃん、ちょっと待ってくれ!!」
珠が2人を案内しようとしたとき、客引きの男たちが不死川を呼び止めた。
不「何だァ。」
「少し話したいことがあるんだ!!
本当に少しだけでいい!!」
不「…わかったァ。」
男たちの必死の形相に了承する。
不「杏、先行ってろォ。」