第12章 邂逅
そんな困った様子の杏を見下ろして黙っていた不死川だったが、ハァ、と溜息をつく。
不「俺たちは旅行で来たんだァ。だが、観光するにもどこに行けばいいか分からなくてなァ。昼餉でも食いながら考えようと思ってんだァ。」
困惑している杏の肩を抱き寄せ、できる限り威圧感を与えないように意識して話す不死川。
しかし、いくら意識したとしても堅気の人間には見えない不死川が怖く、少し後退る男たち。
それを見かねた杏がニッコリと微笑んで男たちを見る。
『そうなんです。この町のこと教えてくださるようなお食事処はございますか??』
めちゃくちゃ怖い人に肩を抱かれためちゃくちゃ可愛い人。
傍から見れば杏も怖い人に見えなくもないが、男たちは心臓を撃ち抜かれたのかウッ、と胸を抑える。
「だ、だったらやっぱりうちだ。うちの女将はこの町のことならなんでも知ってるからな!!」
「うちの大将だって負けてねぇよ!!」
気を取り直して尚も、言い合いを続ける男たち。
杏がどうしたものか…と考えていると、背後から綺麗な女性の声が響いた。
「だったらうちにいらっしゃいな。」
声がした方を振り向くと、綺麗な女性が店の看板と思われる板を抱えて微笑んでいた。