第12章 邂逅
サ「モウスグヨ!!…見エテキタワ!!」
サクラの言葉にじっ、と前方に目を凝らす。
『…あの町、ですね。』
不「みてぇだなァ。」
ピリッ、と警戒心が強まる。
『では、ここからは歩いていきましょうか。
こんな姿で走っていては怪しまれそうですし。』
不「あァ。……行くかァ、杏。」
下の名前で呼ばれ、思わず不死川に視線を向ける。
すると、不死川は手を差し出していた。
『………えぇ、実弥さん。』
一瞬、固まってしまったがすぐにニコッ、と微笑みながら不死川の手をとる。
町へ着き、とりあえず昼餉をとるためにお店を探す。
『どうしましょうか。できれば情報の集まりやすいところがいいですけど…。』
あたりを見渡しながら困ったように首を傾ける杏。
すると、飲食店の営業と思われる人たちが声をかけてきた。
「もしかして、ご夫婦ですか??
でしたら、おすすめのお店がありますよ!!」
「なんのなんの!!うちのほうがずっといいですよ!!ぜひ、うちへ!!」
『えっと…、あの……。』
などと口々に営業をかけてくる。
聖徳太子でもない杏は一斉に喋られて聞き取れずに眉を下げる。