第11章 護衛役
杏(技のキレがすごいわね。
当たったら痛そうだわ。)
技の威力に少し驚きつつも竹刀を構える。
音羽は右足を一歩後ろへ下げ、走り出す。
─ 風の呼吸 捌ノ型 初烈風斬り ─
杏(…“初烈風斬り”。すれ違いざまに斬り込む技ね。なら…)
──ガッ
音「っ、」
本来なら杏の横を通り過ぎるはずの技。
しかし、2人は鍔迫り合いの状態になっていた。
杏(不死川さんの技じゃこうはいかないけれど、このくらいの速さなら受けられる。
威力はすごいけどね。)
ググッ、と押し合いになりながら杏は微笑んだまま観察を続ける。
杏(さぁ、私を弾けるかしら。)
杏は自分からこの状態を変えるつもりはない。
変わるなら音羽次第だ。
──シィアアア
『…………。』
音羽の口元から聞こえる呼吸音に竹刀に力を入れなおす。
音「っ、」
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──当時刻
祈里は外の花たちを見ながら涼んでいた。
祈「ふぅ…。この程度で疲れていてはいけませんね。もっと頑張らなくては。」
よしっ、と自身を鼓舞し、上を向く。