第11章 護衛役
屋敷は隠たちが掃除をしてくれていたのだろう、ほとんどの部屋が二月前と変わらず綺麗だった。
しかし、この部屋だけは中に入れなかったからか少し埃を被っていた。
──パタパタ
無言で掃除していく杏。
最後に髪紐と髪留め、簪に触れる。
『…っ、』
ズキリ、と痛む頭を右手でおさえる。
杏(この部屋にあるものたちは…なんなのかしら。)
今までは漠然と大切なものだと感じていた。
だからこそ、誰にも触れられないように少し面倒くさい鍵を作ってもらったのだ。
何か理由があるわけではなかった。
杏(でも…今ははっきりとわかる。
きっと、記憶をなくす前の大切な思い出…。)
ポロリ、と落ちてくる一筋の涙。
俯き、1人で物思いに耽る。
サ「杏ーー!!護衛役ノ隊士ガ来タワヨー!!」
そんななか、サクラの声が屋敷に響き渡る。
杏は立ち上がり、涙を拭って部屋を出る。
鍵を閉め、木箱に戻し引き出しに入れる。
絡繰を戻すと玄関へと向かってゆっくり歩いていく。
左へ曲がると玄関全体が見渡せる。
そこにはサクラと2人の女性隊士がそれぞれ大きめの風呂敷を抱えて立っていた。