第3章 壊された幸せ
つばきは最後の力を振り絞って杏の手を引き、童磨から離す。
そして、杏をドンッと玄関の方へと突き飛ばす。
『きゃっ、』
ギリギリ転ばず、倒れているゆりともみじの近くで止まり、つばきのほうを振り返ると、
『つばき姉さ…』
──ザクッ
つ「うぐっ、」
つばきが童磨に斬られていた。
血を吐きながら、倒れるつばき。
『つばき姉さんっっ!!』
童「何回も何回も邪魔してきて、本当に愚かな娘だなぁ。まぁ、でも大丈夫。君も俺がちゃんと救ってあげるからね。」
倒れたつばきを見下ろしながら笑う童磨。
その顔にはつばきに投げられた包丁はなくなり、傷も消えていた。
童「さぁ、これで邪魔はいなくなったよ。
行こうか、“青い彼岸花の君”。」
目の前でつばきが死ぬ姿を見た杏は頭の中が真っ白になり、なにも考えられなくなる。
無抵抗で童磨に手をひかれる杏。
倒れているゆりともみじの隣を通り過ぎる瞬間、杏の耳にとても小さい声が聞こえた。
ゆ「あ、んずちゃ…」
『ゆり、姉さ…』
ゆりに名前を呼ばれたことで覚醒した杏は童磨の手を振り払う。
も「あん、ず…。」
『もみじ姉さんっ!!』