第10章 番外編 猫
『っ!!』
目の前でゆらゆらと揺れる物体……もとい、猫じゃらしに目を奪われる杏。
不死川が右に左に動かすと杏の瞳はそれを追いつづける。
──シュッ
猫じゃらしがはやく動いた瞬間、猫じゃらしを捉えようと右手が動く。
たしっ、と床に押さえつけ、ぱぁぁぁっと顔を明るくしたところでハッ、と我に返る杏。
『にゃんにゃにゃあ!!
(何させるんです!!)』
フシャーッと威嚇する杏を見てこれでもかと笑う不死川。
不「ははっ、ほらほらァ。」
怒る杏の目の前で猫じゃらしを振り続ける不死川。
杏は確かに怒っていたのにどうしても猫じゃらしに目を奪われてしまう。
不死川がはやく動かす猫じゃらしを捉えようとシュッシュッと手を伸ばす杏。
半刻ほど経っただろうか、疲れてきた杏がぽかぽかと温かい太陽の光でウトウトとし始める。
──ポスン
うつらうつらと船を漕いでいる杏の頭が不死川の肩へと落ちる。
横目で杏の様子を見る不死川。
寝始めた杏の頭をそっと持ち、自分の膝へと移動させる。
突然変わった体勢に身動ぐ杏。
寝転がって身動いでしまうといつもは見ることのできない位置の白い足が見えるようになってしまう。