第10章 番外編 猫
──トントン
心地良い音が響く台所。
杏の尻尾も自然とユラユラと揺れる。
──カタン
不意に後ろから音がして振り向く杏。
まだ浴衣姿の寝起きの不死川が立っていた。
『にゃにゃにゃにゃあ。にゃにゃんにゃあにゃにゃん。
(おはようございます。お台所お借りしてます。)』
ニコッと微笑み、再び料理を続ける。
不「あァ…、はよォ。」
暫く料理する杏の後ろ姿を眺める不死川。
不(髪…上げてんのかァ。)
普段は髪に隠れて見えない項をジッ、と見つめる不死川。
『にゃにゃにゃあ??にゃんにゃにゃにゃあ??
(不死川さん??とりあえず着替えてきては??)』
あまりに見つめられすぎた杏は少し頬を染めながら不死川に声をかける。
不「…あァ。」
小さく呟き、自室へと向かう不死川の背中を見ながら、杏はふぅ、と息を吐く。
杏(どうしてあんなに見てたのかしら…。
流石に恥ずかしい…。)
熱くなっていく顔を手で仰ぎながら味噌汁の鍋をかき混ぜる。
一方、自室に戻った不死川は支度をしながら物思いに耽っていた。
不(朝起きたら台所から調理の音と味噌汁の匂いがして寝ぼけながら見に行ってみたら楽しそうに料理してるとか…。)