第9章 夢
ふるふる、と頭を振りながら呟く杏。
『その声のことを考えていると、とても怖くなります。私の中の…何かが、壊れそうで…。』
ぎゅっ、と自分自身を抱きしめる。
小刻みに震えている身体。
杏(…桜柱ともあろう者が、情けない…。)
更にぎゅっ、と力を込める。
杏(止まれ、止まれ、止まれ…、とま…)
祈るように心の中で何度も呟く杏。
しかし、そんな杏の心の呟きは途中で止まった。
お「大丈夫だよ、杏。ゆっくりでいいんだ。」
『おや、かた、さま……。』
杏の身体を包み込むお館様。
自然と震えが止まっていく。
杏(お館様…………。
やはり、この方こそが私のすべて………。
余計なことは何も考えなくていいのよ。)
目を瞑り、心の中で自分に言い聞かせる。
『…ありがとうございます、お館様。』
お礼を言い、お館様の腕の中からでる。
お「今ふと思ったんだが…」
再び向かい合ったお館様がニコニコと笑いながら杏の頬に触れる。
お「本当に、大きくなったね。杏。」
【 杏ちゃんも大きくなったわね〜。 】
──ドクン
『…え??』