第9章 夢
驚いたあまね様は慌てて娘たちに指示をだす。
ひなき様とにちか様もバタバタと部屋を出て行った。
あ「杏様。目が覚めて良かったです。」
『あまね様…。
私はどれくらい眠っていたのでしょうか。』
あ「二月ほどです。皆、心配しておりましたよ。」
『すみません…。』
微笑みながら穏やかに話す2人。
お「杏。」
襖の奥から聞こえた声にはじかれたように反応する杏。
──ガラッ
お「おはよう、目が覚めて良かった。」
『お館様………。』
姿をあらわしたお館様を見て小さく呟く杏。
ツー、と、頬に涙が伝う。
『…おはようございます、お館様。』
お館様は静かに涙を流す杏を優しく包み込む。
お「本当に、心配したんだよ。」
『はいっ、はいっ、……ありがとうございます。』
杏(あの暗闇の中で聞こえた暖かな声はやっぱりこの方…。)
顔を上げると、お館様の背後に控えていた輝利哉様、ひなき様、にちか様、かなた様、くいな様が見える。
いつも、大人びていて何を考えているかわからないことが多い方々だが、今ばかりは何を考えているかよくわかる。