第9章 夢
本当の理由はお館様からの文に
『手紙には書けないが、杏が目覚めない原因がわかった』
とあったからだった。
手紙には書けないとあったので直接聞きにきたのだ。
し「はい。身体的なことではなく、精神的に大きな負荷を負ったということはわかるのですが、その原因が私にはわかりません。」
医者として状況から考えられる推論と自分の考えを話すしのぶ。
しのぶの言葉に大きく頷くお館様。
お「しのぶは杏が記憶を失くしていることは知っているね??」
し「はい。」
お「恐らく、そのことが関係していると思うんだ。
しのぶは杏が記憶を失くす以前のことは知っているかな??」
し「いえ、そこまでは。」
お「それじゃあ、そこからだね。」
し「しかし、私は聞いてもよろしいのでしょうか…。」
自分も知らない過去の自分のことを他人に知られるなど快く思う者はなかなかいないだろう。
奥の部屋で未だに眠っている杏のことを考えると、勝手に聞くのは憚られる。
そんなしのぶを見てお館様は微笑む。
お「大丈夫だよ。実は杏に言われているんだ。
もし、過去を聞きたい者がいれば話してくれってね。」