第8章 無限列車
『さぁ。そんなに前ではないですよ。』
先程とは打って変わって、いつもの明るい声音で話す杏。
猗「お前は…柱か。それもかなりの手練だな。」
『あら、よくわかりましたね。流石です。』
杏が柱になったのは13のとき。
もう3年間、柱をしているため場数は踏んできたほうだ。
猗「お前も強い…。その練り上げられた闘気、素晴らしい。俺は猗窩座。お前は??」
炭治郎の日輪刀が刺さったまま会話を続ける猗窩座。
杏は炭治郎の日輪刀の方に目を向けながら話す。
『鬼殺隊 桜柱 音白杏と申します。』
素直に自己紹介する杏に笑顔で話しかける猗窩座。
猗「桜の柱か…。
今までに出会ったことがないな。」
『そうでしょうね。この呼吸は私が編み出したものですから。あなたは…』
杏はようやく、猗窩座の胸あたりに刺さっている炭治郎の日輪刀から目をはなし、猗窩座の顔を、目を見る。
十二鬼月が相手の場合、基本的に相手の地位を確認して戦う杏。
『十二鬼月…上弦の…………』
──ドクン
右目の“上弦”を読み、左目の“参”を読もうとした瞬間、杏の心臓が大きく脈打った。