第8章 無限列車
『もう、大丈夫。あとは私たちに任せて。』
小さく呟き、一気に加速する杏。
すぐに炭治郎の日輪刀が刺さったまま走る鬼の背を見つけた。
杏(随分と遅いわね…。)
炭治郎が追ったところで、森の中には僅かな陽光しか入ってこない。
そんな中で炭治郎があの上弦の鬼と戦っても勝てるわけがない。
そのことが分かっているからこそのあの速度なのだろう。
杏(上弦の鬼のくせに、探査能力もないのかしら。
……いや、それほど煉獄さんが与えたダメージが大きいのか。)
柱の接近に気づかない様子の鬼を観察する。
杏(どちらにせよ、今なら近づける。)
しのぶには滅殺するつもりはないと言ったが、できるのならば滅殺する。
お館様のために。
相手は上弦の参。
今まで出会ったどの鬼よりも鬼舞辻無惨の血が濃い鬼だ。
この鬼を倒せば、鬼舞辻無惨に与える損害はどれほどか…。
それならば悩む余地はない。
一気に距離を詰める杏。
『…お待ちなさい。』
いつもより、低い声で話しかける杏。
猗「…っ!?お前…いつからそこにいた。」
驚き、陽光の影になるところ立ち止まる鬼。