第6章 蝶屋敷
席を立ち、皆に挨拶する杏。
し「でしたらこれどうぞ。」
『わ、ありがとうございます。助かります。』
しのぶに繕った羽織を手渡され、思わず顔が綻ぶ。
『本当にお世話になりました。』
し「いえ、またいつでもいらしてください。」
『はい。今度は花屋敷にもいらしてくださいね。』
歓迎します、と微笑む杏。
なほ、きよ、すみにも手をふり、蝶屋敷をあとにした。
────────
──────────────────
屋敷にたどり着き、書斎に入ると積み重なった書類たち。
『さて、頑張りますか…。』
そこから約8日間。
杏は書斎に釘刺しにされていた。
夜は数日に1度入る任務を行い、昼間は書類を片付けていく。
『もう絶対に書類は溜め込まない…。』
すべての書類の整理がおわり、床に倒れ込む杏。
心の底からの決意も、おそらく果たされることはないだろう。
『…蝶屋敷、行こうかしら。』
炭治郎と話してから約9日たった。
あのときにあげたヒントを理解することはできただろうか。
本当は、ヒントなんてあげるつもりはなかった。
初対面での印象が悪すぎたため、どうしても冷たい視線を送ってしまうことが多かったが、話してみて印象がガラリと変わった。
真面目で素直。
おそらく、嘘もつけない性格だろう。
真っ直ぐな瞳を見ていると手を貸してあげたくなったのだ。