第50章 勝利と代償
ゆっくりと瞼を開いた杏は見慣れないぼやけた景色に思わず目を細める。
杏(……蝶屋敷??)
漸くピントが合い、見慣れた天井であることに気がついた。
身体を起こそうとするものの眼球以外は全く自分の思う通りに動かない。
杏(身体が動かない……何がどうなったんだっけ。)
なんとか意識を失う前の記憶を思い出そうと悶々と考えていると、視界の端──…手元に見覚えのある黒を見つけた。
『ぁ………』
杏(……声が出ない。一体どれだけ寝てたのかしら。)
声を出そうとしたが、はくはくと口を動かすのみで声らしい声がまったく出ない。
なんとか指先だけでも動かせないかと工夫していると、ふと指先が動いてその柔らかい羽に指が触れる。
杏(温かい……そうだ。私たち…勝ったんだっけ。)
その温かさに触れてあの闘いに勝ったのだと、生き残ることができたのだと気がついた。
杏(他のみんなは無事かしら。……そういえば治療されながらぼやいていた人もいたわね。)
そんなことを思い出しながら小さく笑っていると、触れていた羽がもぞもぞと動き出した。
サ「杏??」