第6章 蝶屋敷
しのぶの言葉を聞き、スッとしのぶから視線をそらす杏。
そのまま誤魔化すようにカナヲに瓢箪を手渡した。
し「杏さん??」
先程よりもにっこりという効果音がつきそうなほどの笑顔をみせるしのぶ。
しかし、今の杏にとってはその笑顔の方が真顔よりよほど怖い。
『…はい。床が汗で濡れていることに気づかなかったのは周囲への警戒を怠った私のミスです…。』
しゅん、と肩を落とす杏。
そんな杏の反応を見て満足そうに微笑むしのぶ。
し「はい。何事も素直が1番です。」
ニコニコと笑いながらへこんでいる杏の頭を軽くなでてあげる。
『ありがとうございます、しのぶさん。』
し「いえいえ。こちらこそ、カナヲの相手をしてくださってありがとうございます。」
カ「ありがとうございました。」
しのぶに続くようにカナヲもお礼を述べる。
『いえ、こちらこそ。
誰かと稽古することはあまりないですから。
ありがとうございました。』
杏もにっこりと微笑みながら軽く頭を下げる。
端の方に置いておいた羽織をとり、再び身につける。
そこで、もう1つの大事な用事を思い出した。