第6章 蝶屋敷
カナヲの顔の前で薬湯の入った湯呑みを止め、笑顔を見せる杏。
カ「…っ。」
一瞬だった。
これまでも圧倒的な速さだったのに更に速くカナヲの顔の前まで薬湯を持っていっていた。
カ「ハァハァハァ。」
集中の糸が切れ、大きく呼吸を乱すカナヲ。
大量の汗が彼女の顔を滴り落ちる。
『大丈夫??すぐに鬼ごっこいけますか??』
カ「大丈夫です。」
杏が声をかけるとすぐに呼吸を整えるカナヲ。
『それではいきましょうか。
しのぶさん、お願いします。』
し「はい。それではカナヲが追う側。
杏さんが逃げる側でよろしいですか??」
『はい。』
カ「はい。」
し「それでは…はじめっ!!」
──シュッ
先手必勝と言わんばかりに高速で真っ直ぐ突っ込んでくるカナヲ。
そんなカナヲをふわりと避ける杏。
今度も同じ。
カナヲの表情が苦しそうなのとは真逆に微笑みながら逃げる杏。
炭治郎たちの目には、カナヲが先程までの自分たち。
杏が先程までのカナヲに見えた。
善「ね、ねぇ。何者なの??あの可愛い人。」