第2章 甘味処〈さくら〉
お客さんたちは口々にもみじの琵琶を褒めながらゆったりと琵琶の音に聴き入る。
杏はもみじの琵琶を聴きながら目をつむり、軽く息を吸い、歌いはじめた。
『 沢山の花びら 私の心に
ひらり ひらり 舞い降りてゆく 』
その瞬間、店の中の空気が変わる。
みんな優しい顔で2人の奏でる音に耳を澄ませる。
そんなお客さんたちを見ながら、楽しそうな妹たちを見つめるゆりとつばき。
『 一枚一枚の想い出 みんなの心に
ふわり ふわり 舞い降りてゆく
花びらが 私たちを 包んでくれた 』
歌い上げ、閉じていた目を開く杏。
もみじも最後に琵琶を軽くひき、目を開ける。
2人は互いに目を合わせるとお客さんに向かってお辞儀をする。
客A「やっぱり2人とも上手だねー。」
客B「なんか泣けてくるんだよなー。」
客C「たしかに!!なーんか泣けてくる!!」
2人のお辞儀を合図にお客さんたちが拍手をし、口々に2人を褒め称える。
もみじは褒めてくれるお客さんたちにお礼を言いながら、店の外を見る。
店の外には2人の歌を聞いて、野次馬ができている。