第40章 兄弟
もっともっと長生きして欲しい。
幸せになって欲しい。
片腕…それも利き腕を失くしてこれからどうしていくのか。
傷口から菌が入り、それが致命傷になるかもしれない。
そんな男と一緒になってくれる女がいるのか。
これから死ぬまで1人で寂しく過ごすことにならないか。
無一郎の幸せを誰よりも願っていた有一郎には受け入れられなかった。
そんな有一朗の想いが伝わったか、伝わらなかったか…無一郎も口を開く。
無「仲間を見捨てて逃げられないよ。」
有「お前がそんな怪我を負う必要はなかった。死んでいたかもしれない。これから死ぬかもしれない。こんな所で死んでどうするんだ。無駄死にだ。そんなんじゃ、何のために生まれてきたのか分からないじゃないか。」
そんな有一朗の言葉に無一郎も言い返す。
無「兄さんが死んだのは11だろ。僕より兄さんの方がずっと可哀想だよ。僕が何のために生まれたかなんてそんなの自分でちゃんと分かってるよ。
僕は幸せになるために生まれてきたんだ。
兄さんもそうでしょ??違うの??幸せじゃなかった??幸せな瞬間が一度もなかった??」