第40章 兄弟
悲「時透…お前たちのお陰だ…。お前たちのお陰で勝てた…。」
小さな寝息を立てて眠る時透の頭を撫で、無理やり握るために巻いていた包帯を解き、刀を離してやる。
悲「今少し…休んでいろ。」
まだ続くであろう戦い。
そして、片腕を失くした重症者であっても居なくては困るであろう敵。
悲(まだ年若いお前をこき使う無体を許してくれ。)
────────────────── ────────
無一郎が目を覚ます。
無(僕は…死んだのか?それとも夢?)
目を開いた景色はイチョウが舞う懐かしい景色の中だった。
服装も、隊服ではなく昔来ていた服装。
そんな無一郎の目の前には、自身より少し幼いままの兄・有一郎が立っていた。
無「兄さん…。」
有「こっちに来るな、戻れ!!」
あの頃と変わらない辛辣な言葉が飛んでくる。
しかし、無一郎の瞳に映る兄はボロボロと涙を零していた。
無「……。」
無一郎の瞳からも同じように涙が零れる。
無「どうして??僕は頑張ったのに…褒めてくれないの??」
有「どうして??こっちが聞きたい。逃げれば良かったんだ。お前はまだ14だぞ。右腕を失くすなんて…これからどうするんだ。」