第40章 兄弟
『玄弥くん。今説明した通りです。君が鬼となり、暴走したとしても必ず私と悲鳴嶼さんで抑えます。誰も殺させません。この薬は不死川さんが貴方のことを考えて、しのぶさんにお願いして作って頂いたものです。鬼から人に戻る過程はかなりの苦しみがあるそうです。…いいですか。覚悟を決める時間はありません。今すぐ決めなさい。』
杏の力強い瞳に玄弥は少し間を置いて頷いた。
玄「…お願い、します。」
その言葉に杏は小さく頷くと、玄弥が開けた口に握っていた鬼の細胞を入れた。
玄弥は目を瞑りながらゆっくりと嚥下する。
──ゴクリ
少し間を置いた後、玄弥の身体が震え始める。
その様子を見た杏はふらつく身体で玄弥の半身を取るために動く。
やっとの思いで運び終えると、悲鳴嶼と共に半身と半身を押し付けた。
すると、瞬く間にくっついていく。
『やっぱり、…無惨。』
その修復の速さに檻は無惨の細胞だったと確信する。
『…この速度なら不死川さんの血は大丈夫そうですね。』
そして、ある程度身体が再生したところで羽織の袂から木箱に入った薬を取り出す。
すでに注射器に入っているそれはどんな場面でもすぐに打てるようにとのしのぶの気遣いを感じられた。
悲鳴嶼と頷き合い、打とうとしたその瞬間──…
『っ、』
突然、杏に覆い被さる玄弥。