第40章 兄弟
悲(この状況で、まだ生きている…。鬼を取り込んだ為か…。しかし、その効力も出血と共に殆ど抜けている。稀血である不死川を傍らに置いても、おそらく差し障りはない…。)
そう考えながら悲鳴嶼は不死川を玄弥の傍らへ寝かせた。
玄「兄…貴…。」
静かに眠る兄の姿に、玄弥は安堵の声をあげた。
玄「生きて…る…良かっ…た…。」
『君もまだ生きるんですよ。』
そう言いながら戻った杏の手には鬼の細胞らしきものが握られていた。
悲「音白??なんだそれは…。」
『私が閉じ込められていた檻の欠片です。おそらくこれは無惨の細胞。これで玄弥くんを再び鬼に近づかせて、この人の血を玄弥くんに飲ませます。稀血は鬼の再生力を高めますから。そして、身体が再生したところでしのぶさんに作って頂いた鬼を人間に戻す薬を打ちます。』
杏の早口での説明に悲鳴嶼は眉間に皺を寄せる。
悲「不死川は出血も多い。瀕死だ。それでも血を飲ませるのか。それに今の状態の玄弥に不死川の稀血は刺激が強すぎるのではないのか。」
『この人は私が何度言っても血の使い方をやめなかった。"使えるものは何でも使う”それがこの人のやり方です。大切な弟のためなら尚更でしょう。本望ですよ、きっと。それにアオイちゃんが作ってくれた造血剤もあります。誰も死なせない。お願いします、悲鳴嶼さん。手伝ってください。』
杏の力強い声に悲鳴嶼は悩みながらも頷いた。
悲「……わかった。玄弥が暴れれば師匠である私が取り押さえよう。」
『お願いします。』
そう言いながら玄弥の口元にそれを運ぶ杏。