第39章 上弦ノ月陰る時
黒「ぐぅアアア、ぬァアアアア!!」
悲鳴嶼の鉄球でさえ、一筋縄では落とせない。
この現実に、悲鳴嶼も眉をひそめる。
悲(何という強靭な頸。まだ攻撃が足りない!!)
──ヒュン
悲鳴嶼は鎖を操り、頸を挟み撃ちするように斧を下部から振り上げた。
──ガキィン
けれど、黒死牟は玄弥の血鬼術で動きを奪われながらも、あと僅かという所で刀で斧の攻撃を受け止めた。
けれど、黒死牟は技を出せずにいた。
黒(技が出ない!!背中の木か!?大量に私の血を吸って幹を伸ばしている。更にはこの激痛による…体の強張り!!赤く染まった刀のせいだ!!赤い刃…縁壱と同じ……。)
そんな黒死牟の脳裏に、縁壱とのやり取りが走馬灯のようによみがえった。
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巌「後継をどうするつもりだ?」
それは、黒死牟がまだ継国巌勝として鬼殺隊で縁壱と共に鬼と戦っていた頃の事。
巌「我らに匹敵する実力者がいない。呼吸術の継承が絶望的だ。極めた技が途絶えてしまうぞ。」
巌勝は年を追うにつれて、鬼殺隊に対する懸念があった。
それは、呼吸の継承。
彼ら程の実力者が現れず、思うように自分の技を継承出来ない事に、焦りを募らせていた巌勝は縁壱へと後継について問いかけた。
縁「兄上、私達はそれ程大そうなものではない。長い長い人の歴史のほんの一欠片。私達の才覚を凌ぐ者が、今この瞬間にも産声をあげている。彼らがまた同じ場所まで辿り着くだろう。何の心配も要らぬ。私達はいつでも安心して人生の幕を引けば良い。」
そう話す縁壱は、ほんのり微笑み空を仰いだ。
縁「浮き立つような気持ちになりはしませぬか、兄上。」
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不「オォラァアアアアアアアア!!」
──いつか
──これから生まれてくる子供たちが
──ガキィィンッ
不死川の日輪刀と悲鳴嶼の鉄球がぶつかり合い、先程時透の刀で起きた時と同じ様に赤く染まり始める。