第39章 上弦ノ月陰る時
何とかしたいと思う想いから、日輪刀を握る手に力が入る。
その変化に気づいたのは、他ならぬ黒死牟だった。
黒「!?」
時透に刺されている日輪刀の変化に気づいた黒死牟は、思わず目を見開いた。
黒(刃が…赤く…!?)
──ビキキ
黒(何だこれは…!!体が強張る…!!内臓を灼かれるような激痛…!!)
そして、時透の刀に気を取られて動きが一瞬止まった黒死牟の頸へと不死川の刃が触れた。
──ガキィッ
けれど、あと一歩の所で意識が不死川へと向いたがために頸を斬るまでに至らない。
そんな兄らの姿を遠くに見ていた玄弥もまた薄れゆく意識の中で懸命に戦っていた。
玄(まだ残ってる。俺の肉弾…。あいつの体の中に…。みんなの猛攻で…構っていられないんだ…。)
残りの力を振り絞り、玄弥は必死に力を放った。
玄「血鬼…術…」
その瞬間。
──メギィッ
背中に残っていた玄弥の弾から、木の根が生え黒死牟の動きを奪う。
黒(また固定か。目障りな。両断して奴にも止めを。)
けれど、黒死牟の斬撃が玄弥に届くことは無かった。
黒(技が出ぬ…!!)
そして、玄弥へ意識が向いたその一瞬。
──ゴッ
悲鳴嶼の鉄球が、黒死牟の頸へとぶつかり鈍い音を立てた。
──ジュワアァ
純度の高い悲鳴嶼の鉄球が黒死牟の頸を灼き落とそうとする。