第39章 上弦ノ月陰る時
時「杏…さん??なんで…その怪我…。」
『だい、丈夫ですよ。むいち、ろうくん…奴から…目を、離さないで…。』
振り返った先にいたのは左肩から右の腹まで大きな傷を負い、跪いている杏だった。
時(僕を庇ってその傷を負ったんですか、どうしてそんなことしたんですか、いつの間に檻から脱出してたんですか…聞きたいことはたくさんある。でも今は…)
時「はい!!」
そう叫んで頭上の黒死牟を睨み上げた。
玄(守る…皆を、守…る……。)
倒れ、身動きの取れない玄弥だったが、強い想いで戦場を見つめる。
そして、身体中傷だらけになりながらも、諦めず何度も立ち向かおうとする不死川と悲鳴嶼。
そんな2人を見た時透は、新たな焦りに冷や汗を浮かべた。
時(だめだ!!悲鳴嶼さんも不死川さんも、死ぬまで戦う!
だけど、この2人を死なせちゃいけない…これ以上深傷を負わせちゃいけない…。まだ無惨が残ってるんだ。皆の為にも、この2人を守らなければ…。)
その瞬間──…
──キィィィィ
黒死牟の呼吸が変わった。
腰のあたりに杏の手の温もりを感じる。
時(また技が…くる…俺が…何とかしなくちゃ。俺が…まだ刀を握れるうちに…)