第39章 上弦ノ月陰る時
黒(生命が脅かされ、体の芯が凍りつく。平静が足元から瓦解する感覚。忌むべき…そして、懐かしき感覚…四百年振りの──…)
自身の“死”が間近に迫った瞬間──…黒死牟は目を大きく見開いた。
その目には、今ここではない場所が映っていた。
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ほんの数秒…いや数秒もなかったかもしれない。
黒死牟が目を見開いたその次の瞬間だった。
玄弥の血鬼術により身動きの取れなくなった黒死牟。
その頸へと不死川の刃があと僅かで届くその瞬間──…
何が起きたのか分からなかった。
突然の黒死牟の咆哮。
それと同時に黒死牟から無数の斬撃が現れ、まるで竜巻の様に悲鳴嶼達へと襲いかかった。
不死川や悲鳴嶼は何とか即死の斬撃は躱したものの、体に無数の斬撃を受けた。
玄弥は頭から足にかけて縦に斬撃を喰らい、真っ二つに裂かれてしまった。
さらには、杏を捕らえていた檻さえも斬り刻まれた。
思わぬ反撃。
そんな黒死牟の身体中には、あの奇妙な刀の刃先がまるで木の枝の様に生えていた。
時透は黒死牟を見上げて顔を青ざめていた。
時(身体中から刃…!!振り動作無しで出した刃の数だけ攻撃を放った…。先刻まであれだけ刀一本に梃子摺っていたのに…この…化け物!!まずい…死ぬ……何の役にも立てない…。
…いや、待て。なんで俺……??)
違和感を感じて振り返った時透は目を見開いた。