第39章 上弦ノ月陰る時
黒(鉄球の男の数珠!?)
悲鳴嶼の投げた数珠の一粒が、幾重の攻撃の隙間を掻い潜り 黒死牟の手の甲へ当たった。
これには、誰よりも黒死牟が驚いた。
黒(鎖を振る瞬間に投げたのか。どのように私の視界を掻い潜った??)
一瞬、黒死牟の気が逸れた。
それを不死川が見逃さなかった。
ー 風の呼吸 壱ノ型 塵旋風・削ぎ ー
そして、不死川へと気が更に逸れた瞬間──…
──ゴッ
悲鳴嶼の鉄球が黒死牟の右肩から腕を抉り落とした。
黒(また…。)
数珠の時と同じように視覚を掻い潜り、黒死牟へと届いた攻撃。
これには黒死牟も確信せざるを得なかった。
黒(そうか。この男…。)
そう思った瞬間。
寸前に迫る気配に気付いた。
──ズシャッ
時透の左足へと振り払われた黒死牟の刃を時透がギリギリのところで相殺しようとしたが、代わりに時透の首元を掠める。
──ドッ
しかし、それと同時に時透は黒死牟の左側の脇腹を突き刺していた。
──ゴフッ
黒(頸動脈が斬れていない…。)
これには、黒死牟も動揺を隠しきれなかった。
黒(限り限りで躱した。私の攻撃を……手負いの子供が。数珠をぶつけられ、僅かながら攻撃が鈍ったとしても…。)
驚き、時透を見下ろす黒死牟。