第39章 上弦ノ月陰る時
そんな時透に気づいたのは、透き通る世界を知覚出来るようになった悲鳴嶼だった。
悲「不死川!!」
不「!!」
悲鳴嶼に呼ばれ振り向いた不死川もまた、時透の行動を見て 意図を汲み取り、動き始めた。
──タン
間合いの内側へ入るために加速する時透。
──ダンッ
──ドンッ
そんな時透を両側から不死川と悲鳴嶼が手助けするよう、共に走り出す。
時(!!)
これには、誰よりも時透が一番驚き目を見開いた。
時(俺の意図を汲んで合わせてくれた。)
しかし、黒死牟はその様子を冷静に視ていた。
黒(ふむ…。同時に向かってくるより他に手はあるまい。
しかし、これで此方も三者同時に仕留められる。)
ー 月の呼吸 拾肆ノ型 兇変・天満繊月 ー
渦を巻くような斬撃が、3人へと立ちはだかる。
時(入れ入れ入れ入れ!!抜けろ!!間合いの内側に!!)
不(くぐれ!!攻撃の隙間をくぐれ!!折り重なった攻撃の隙間!!)
時透は懸命に足を動かし、幾重に重なる斬撃の隙間を駆け抜ける。
不死川も長年の経験と勘を頼りにこれまでになく黒死牟に近づく。
そんな中、この斬撃の渦を容易く抜けさせるわけにはいかない黒死牟は再び技を放つ為、刀を構えようとしたそのとき。
──ベシッ
何かが刀を構えた黒死牟の右手にぶつかる。